完全内視鏡下心房細動手術
ウルフ-オオツカ法
(左心耳切除/肺静脈隔離術)
ウルフ-オオツカ法は
2022年4月から
保険診療が可能になった手術です
心臓に原因がある脳梗塞
心臓の中で出来た血栓が脳へ流れていき、血管を塞いでしまうことを「心原性脳塞栓症」と言い、脳梗塞の約2割がこれに該当します。特に心房細動という不整脈を原因とすることが多く、左心房の「左心耳」という袋状の部位に血栓ができ、血流が多い脳へと流れて血管を詰まらせてしまいます。この脳梗塞は前兆がなく、ひとたび発症すると、太い血管を塞ぐことが多いため後遺症として重い麻痺が残ったり、死亡に至るケースが半分程度あると言われています。
心房細動は増加傾向にあり、北海道に約4万人、札幌市だけでも1万5千人程度の推定患者がいると言われています。
左心耳内の血栓(エコー画像)
左心耳で出来た血栓の流れ
不整脈の診断について
不整脈の診断は、いつ起こるかわからない発作時の心電図をピンポイントで計測する必要があるため、ホルター心電計という機器を装着し、24時間心電図を記録します。
2020年にコード類が無い、胸部に貼るだけの心電計が開発され、最大7日間の連続記録ができるようになりました。サイズが小さく、長時間記録できるため、発作時の心電図の検出頻度向上に期待できます。
コードレス心電計
「Heartnote」
3cm×10cm、薄さ5mm、重さ12g
防水機能により半身浴が可能
心原性脳塞栓症の予防
心房細動による脳梗塞の予防には、ワーファリンなどの抗凝固薬(血をサラサラにする薬)を服用し血栓の予防を行います。しかし、抗凝固薬を服用していると、脳出血、消化管出血、鼻出血、血尿などの出血性合併症が起きてしまい、抗凝固薬の服用が継続できない方がいます。すなわち、脳梗塞予防のためには抗凝固薬が必要となりますが、出血のために抗凝固薬が服用できない方は、大きな脳梗塞のリスクにさらされたまま生活せざる得なくなります。
当院ではそのような方を対象に、血栓ができる左心耳を閉鎖もしくは切除する治療を行っています。血栓ができるスペースをなくすことで、脳梗塞のリスクを下げ抗凝固薬をやめることができるため、出血のリスクも下げることができる治療です。
完全内視鏡下心房細動手術
ウルフ-オオツカ法とは
〈不整脈の治療も同時に行える〉
〈傷が小さく目立たない〉
〈身体の負担が少なく早期社会復帰が望める〉
ウルフ-オオツカ法とは、血栓発生元の左心耳を切除しつつ、不整脈治療のアブレーションを外科的に行う手術です。手術名は、この手術を考案したアメリカのランドール・ウルフ医師と、日本の大塚俊哉医師の名前に由来します。
左心耳の切除はステープラーという器具を使用します。ステープラーは左心耳を外側から挟み込み、切除と縫合(医療用ホチキス)を同時に行い完全に閉鎖します。心臓の外側から閉鎖するので内側には血流を妨げるものは何もなく内皮化が早いため、術後すぐに抗凝固薬の服用を中止できます。
左心耳を切除後はアブレーションを行います。心房細動を引き起こす電気信号の異常は、約70%が左心房に繋がる肺静脈にあるとされていますので、肺静脈の周りを焼灼して電気信号の異常を遮断します。
手術時間は左心耳の切除が約30分、アブレーションが45分程度となります。
-
ステープラー
-
左心房を挟むステープラー
-
肺静脈の周りのアブレーション
左の針金状のものは切除した左心耳の縫合部
実際の手術動画
切除前と切除後の左心耳
切除箇所は短期間で修復(内皮化)されるため血栓が出来る恐れがなくなり
抗凝固薬を速やかに停止することができます。
-
切除前の左心耳(CT画像)
-
左心耳切除後の縫合部(CT画像)
外科的手術が出来ない方でも同等の治療が受けられます
大塚俊哉医師と
札幌心臓血管クリニック
札幌心臓血管クリニック 顧問
大塚 俊哉 医師
○医学博士
○日本心臓血管外科学会 指導医・専門医・評議員
○日本低侵襲心臓学会 世話人
○不整脈外科研究会 世話人
○日本左心耳クラブ 代表
○MICS サミット監事
○チューリッヒ左心耳マネージメントコース ファカルティ
ウルフ-オオツカ法を考案された大塚俊哉医師は、自ら多数の治療を行いながら、ウルフ-オオツカ法を日本中に広め、より多くの患者様が治療を受けられるよう尽力されています。そして、習得した医師同士がアイデアを出し合い、ウルフ-オオツカ法のクオリティをさらに高めていくこともお考えです。
札幌心臓血管クリニックは、この優れた治療を、北海道の患者様へ高いクオリティで提供するために、大塚俊哉医師を顧問としてお招きし、定期的に直接指導を受けています。