経皮的左心耳閉鎖術
WATCHMAN(ウォッチマン)
当院では脳梗塞の原因となりうる左心耳を
カテーテルを用いて閉鎖もしくは内視鏡で切除する治療を行っています
心臓に原因がある脳梗塞
心臓の中で出来た血栓が脳へ流れていき、血管を塞いでしまうことを「心原性脳塞栓症」と言い、脳梗塞の約2割がこれに該当します。特に心房細動という不整脈を原因とすることが多く、左心房の「左心耳」という袋状の部位に血栓ができ、血流が多い脳へと流れて血管を詰まらせてしまいます。この脳梗塞は前兆がなく、ひとたび発症すると、太い血管を塞ぐことが多いため後遺症として重い麻痺が残ったり、死亡に至るケースが半分程度あると言われています。
心房細動は増加傾向にあり、北海道に約4万人、札幌市だけでも1万5千人程度の推定患者がいると言われています。
左心耳内の血栓(エコー画像)
左心耳で出来た血栓の流れ
不整脈の診断について
不整脈の診断は、いつ起こるかわからない発作時の心電図をピンポイントで計測する必要があるため、ホルター心電計という機器を装着し、24時間心電図を記録します。
2020年にコード類が無い、胸部に貼るだけの心電計が開発され、最大7日間の連続記録ができるようになりました。サイズが小さく、長時間記録できるため、発作時の心電図の検出頻度向上に期待できます。
コードレス心電計
「Heartnote」
3cm×10cm、薄さ5mm、重さ12g
防水機能により半身浴が可能
心原性脳塞栓症の予防
心房細動による脳梗塞の予防には、ワーファリンなどの抗凝固薬(血をサラサラにする薬)を服用し血栓の予防を行います。しかし、抗凝固薬を服用していると、脳出血、消化管出血、鼻出血、血尿などの出血性合併症が起きてしまい、抗凝固薬の服用が継続できない方がいます。すなわち、脳梗塞予防のためには抗凝固薬が必要となりますが、出血のために抗凝固薬が服用できない方は、大きな脳梗塞のリスクにさらされたまま生活せざる得なくなります。
当院ではそのような方を対象に、血栓ができる左心耳を閉鎖もしくは切除する治療を行っています。血栓ができるスペースをなくすことで、脳梗塞のリスクを下げ抗凝固薬をやめることができるため、出血のリスクも下げることができる治療です。
経皮的左心耳閉鎖術
WATCHMAN(ウォッチマン)とは
画像提供:BostonScientific社
WATCHMAN(ウォッチマン)はBostonScientific社が開発した左心耳を閉鎖するためのカテーテル器具です。カテーテルによる治療は外科手術よりも身体的な負担が少ないので、手術を受けることができない高齢の方でも、この治療を受けることができます。留置されたWATCHMAN(ウォッチマン)は時間と共に人体組織の膜で覆われていき、手術から45日後で約90%、1年後に99%の方が抗凝固薬の服用を中止することができ、脳梗塞のリスクを下げながらも、出血のリスクも下げることができます。
画像提供:BostonScientific社
WATCHMAN(ウォッチマン)の適応
日本循環器学会のガイドラインでは心房細動をお持ちで
長期間、抗凝固薬の服用が必要な脳梗塞を発症される可能性が高い患者さんの中で
以下のうち1つ以上を含むリスクが高い方が適応基準となります。
〈HAS-BLED スコアが 3以上の方〉
〈転倒にともなう外傷に対して治療を必要とした既往が複数回ある方〉
〈びまん性脳アミロイド血管症の既往のある方〉
〈抗血小板薬の2剤以上の併用が長期(1年以上)にわたって必要な方〉
〈出血学術研究協議会(BARC)のタイプ3に該当する大出血の既往を有する方〉
適応のない方でも
同等の治療が受けられます