TAVI
Transcatheter Aortic Valve Implantation
外科手術が困難とされていた患者さんに対する新しい治療方法です。
日本では2013年に保険償還され、2016年3月までに多くの患者さんが、
この治療により救われています。
当院は2016年1月6日付で
「経カテーテル的大動脈弁置換術実施施設」
として認定されました。
INDEX
TAVIの対象疾患
症状のある、重症大動脈弁狭窄症が治療の対象となります。
大動脈弁狭窄症とは
心臓の左心室と大動脈を隔てている弁の動きが悪くなり、全身に血液を送り出しにくくなる状態になる疾患です。
大動脈弁狭窄症になる原因はいくつか挙げられますが、近年は加齢や動脈硬化が原因である割合が増えてきています。
- 心臓は全身に血液を送り出す、ポンプの役割を担っています。
- 心臓には4つの部屋(右心房・右心室・左心房・左心室)の部屋があり、それぞれの間には逆流防止弁が存在します(図1)。
- 全身へ血液を送り出す左心室と大動脈の間にある逆流防止弁が大動脈弁であり、通常3枚の扉(弁葉)からなっています(図2)。
この大動脈弁が硬くなり開きにくくなると(図3)、十分な量の血液が左心室から全身へ送り出されなくなります。
大動脈弁狭窄症は自覚症状に乏しく、心雑音などをきっかけに診断されることが多い疾患です。
進行すると、息切れ・動悸、倦怠感・易疲労感、胸痛・胸苦、失神などの症状が出現し、突然死に至ることもあります。
一般的に症状出現と生命予後の関係は、狭心痛が現れると5年、失神が現れると3年、心不全を来すようになると2年と言われています。
大動脈弁狭窄症の治療方法
大動脈弁狭窄症に対する治療は3種類あります。
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1 内科的治療 (薬またはバルーン拡張術)
- 治療方法
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- A. 薬による治療
- B. 経皮的大動脈バルーン形成術
- 有益な点
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- A. 身体への負担が少ない
- B. 開胸手術のできない患者さんでも治療可能である
- 不利益な点
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- A. 根本的治療ではないため、効果よび効果の持続期間が限定的である
- B. 効果の持続期間が短い
姑息的手段であり予後を改善しない
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2 外科的大動脈弁
置換術- 治療方法
- 外科的大動脈弁置換術
- 有益な点
- 根治的治療方法である
直視下に病変を見て、十分に石灰化を取り除くことができる - 不利益な点
- 開胸手術のため、身体への負担が大きい
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3 TAVI
- 治療方法
- 経カテーテル大動脈弁留置術
(TAVI: タビ) - 有益な点
- 開胸手術のできない方でも治療を受けることができる根治的治療方法である
- 不利益な点
- TAVI特有の合併症がある
留置がうまく出来ない、または合併症が起きた時は救命目的に開胸手術が必要となることがある
TAVIのアプローチ方法
カテーテルを挿入する方法は内科的方法(経大腿アプローチ)と外科的方法(経心尖アプローチおよび経大動脈アプローチ)があります。
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- 経大腿アプローチ
- 脚の大腿動脈から留置する最も低侵襲な方法
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- 経心尖アプローチ
- 左胸壁を小さく切開し、心臓の先端(心尖部)から弁を挿入する方法
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- 経大動脈アプローチ
- 胸を小さく切開し(胸骨上部正中切開、もしくは肋間開胸)上行大動脈から弁を挿入する方法
いずれの方法で行うかに関しては、個々の患者さんの合併疾患や
背景などを充分にハートチームで検討して決められます。
提供:エドワーズライフサイエンス株式会社
どのような方がT
AVI対象者となるか?
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- ご高齢の方
(80歳以上)
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- 過去に開胸手術の既往が
ある方(冠動脈バイパス
グラフト術など)
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- 肺気腫など呼吸器疾患を
合併している方
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- 肝硬変など肝疾患を
合併している方
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- 頸動脈狭窄を合併
している方
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- 胸部に放射線治療歴の
ある方
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- 1年以上の予後が期待出来る
悪性腫瘍など悪性疾患合併
がある方
※上記条件に該当していても、TAVI適応とならない場合もございます。
TAVIの利点と合併症
患者さんの利点
- 1 今までの手術に比べて身体への負担が少ない
- TAVIは胸を大きく切開することなく、また従来の外科的弁置換術のように心臓を停止する必要がなく人工心肺を使用しなくて済むことから、患者さんの身体への負担が少ないのが特徴です。
- 2 入院期間が短い
- TAVIは術後3-4日で退院が可能となり、術前を含め1週間程度の入院期間で治療が完了します。退院後はすぐに元の生活に戻る事が出来ます。しかも大動脈弁機能は大幅に改善しているので、治療前には出来なかった色々な活動が可能になります。
- 3 生活の質(QOL)が向上
- 手技時間と入院期間が短いため、比較的早い社会復帰が期待できます。
TAVIで起こり得る合併症
侵襲が低い治療と言っても、対象となる患者さまによっては死亡や合併症の危険がないわけではありません。日本におけるTAVI後の死亡率(術後30日以内)は約2%です。以下のような合併症があります。
- 1 血管や心臓の破裂、出血
- 2 腎不全、透析(造影剤を使用するため腎臓に負担をかけます)
- 3 心筋梗塞、心不全
- 4 感染(創部感染、肺炎、感染性心内膜炎など)
- 5 脳梗塞
- 6 不整脈(ペースメーカーの新規植え込みが5~10%で必要になります)
- 7 人工弁の脇もれ、人工弁の落下、カテーテルの回収困難など
治療費について
2013年10月より、TAVI治療は健康保険適用となりました。
さらに、高額療養費制度をご利用いただくことで、費用の負担を軽減することができます。
健康保険を使用される場合
70歳未満の方 | 約180万円(3割負担) |
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70歳以上の方 | 44,400円(所得により異なる場合があります) |
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高額療養費制度を利用される場合
所得区分 | 高額療養費制度を利用した場合 | |
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70歳未満の方 | 年収 約1,160万円以上の方 | 約30万円 |
年収 約770~1,160万円の方 | 約22万円 | |
年収 約370~770万円の方 | 約14万円 | |
年収 ~約370万円の方 | 57,600円 | |
住民税非課税の方 | 35,400円 |
70歳以上の方 | 44,400円 |
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※食事代、個室代は別途必要になります。
ハートチームについて
ハートチームは循環器内科医師、心臓血管外科医師のみならず、たくさんの職種が垣根を越えて集まった集団です。
お互いの専門知識や技術を共有し、多角的アプローチをすることによって的確な治療を行うことが初めて可能になります。
当院はTAVIに限らず、あらゆる疾患において毎朝検討会を行い治療方針を決定しています。
さらにTAVIに特化したカンファレンスも定期的に開催し、治療の充実を図っています。
TAVI施行までの流れ
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STEP 1 初診外来
これまでの病状および現在の症状などをうかがい、外来で心電図、胸部レントゲン、採血、心エコー検査などスクリーニング検査を行います。
重症大動脈弁狭窄症の治療方法について全体的な説明をさせていただき、治療をご希望・ご検討される方は検査入院を予定させていただきます。
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STEP 2 検査入院
近隣の方は2泊3日、遠方の方は3泊4日の入院期間予定です。
遠方の方は、送迎も致しますのでご相談ください。
CT検査、呼吸機能検査、経食道心エコー検査など必要な精密検査を行い、全身状態を複数の医師を含めハートチームメンバーで評価させていただき耐術能など総合評価を行います。
治療に対するご本人・ご家族のご希望もゆっくりとお話を伺います。
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STEP 3 ハートチームカンファレンス
検査入院で施行した各種検査の結果を踏まえて、最適な治療方針の決定をハートチームで行います。
TAVI、外科的手術、保存的加療(薬物治療)のいずれがより良いか判断し、その結果を退院後外来で改めて説明させていただきます。
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STEP 4 退院後外来
TAVI、外科的手術のいずれかの治療方針を説明させていただきます。最終的にご希望される場合、それぞれの治療時期および入院予定日をご相談させていただきます。
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STEP 5 治療
万全の体制で治療に臨みます。一緒に頑張りましょう。
〒007-0849 札幌市東区北49条東16丁目8番1号
- TEL.011-784-7847
- FAX.011-784-8400